第七世界
「おいおいおい!白目向きながら近寄ってくんな!」

操られているからといって遅いわけではない。

伸びてきた拳を必死に横に飛んで回避する。

拳は床にめり込むほどの威力があるのだが、身体がついていかないのか腕の骨が折れる音が聞こえる。

人間ではないとはいえ、女を蹴るには抵抗があった。

だが、奇麗事を言う状況でもなく、俺は死にたくない。

「運が悪かったんだよ!」

チャンスの内に女の腹部を蹴り上げて、自分から遠ざける。

「はあ、はあ、っつうかよ、こんな事して、何で警察が勘付かねえんだよ!」

「私は手にかけた人を操れるのですよ。だから、彼女達の記憶を操作して日常生活を送らせる事も可能なんです。分かりますか?こちらが危害を加えたとしても、彼女達は何をされたのかは解らず、偽りの自分で過ごすんです。そう、自分達が人間だと思っていても、ヴァンパイアという事実があるんですよ」

「だけど、今日、お前は首を斬ったじゃねえか」

確かに、あれは直しようがないはずだ。

「それは、首がもげないようにくっつければいいだけの話。後は日常に支障のないように過ごさせればいいんです」

「おーいおいおいおいおい!人間は玩具じゃねえんだぞ!」

「玩具などと思った事はありませんよ。殺すだけではなく、彼女達には血を提供させていただいてますから玩具よりは重要な資源だと思っています」

次の瞬間、傍にいたウルがキャサリンに攻撃を開始した。

「兄さん!」

「ウルリカ、あなたがストライキを起こすというのであれば、強制的に働いてもらいますよ」

拳を振るうが、それを横に捌く。

「ちょっと!操られているとはいえ、攻撃してくるならこっちも攻撃しちゃうわよ!」

キャサリンはウルリカと闘っている間に、乾は女達の相手をしていた。

すでに指弾を打つ事無く、刀を使っている。

「ち、俺がやるしかないのか」

俺が動こうとしたところで、キャサリンの腹部にはアルの傍から伸びている爪が刺さっていた。
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