第七世界
先ほどの女よりも、早い拳が飛んでくる。

「くお!」

見えないくらいの速度。

食らえば首がもげるかもしれない。

首を動かして避けると、当たっているとは思えないのに頬の皮が切れる。

「いちち」

今度は、こちらから反射的に拳を打ち込む。

だが、ハエが止まっているといわんばかりに、真横に移動しており今度こそ終わりにさせるために腕を伸ばしてくる。

「おいおい」

俺もヴァンパイアの仲間になったはずじゃないのかよ?

だったら、それくらいの速さになってもおかしくないんじゃないのかよ?

今の俺は普通の速さしか出せてない。

もしかして、ティーナさんのヒールで治っちまったのか?

でも、治ったとしても後にも血を吸われたはずだぜ。

血を吸われるだけではヴァンパイアにならないのかよ?

「馬鹿!」

横からの飛び蹴りによって、ウルの腕は弾かれた。

「いたたたたた!たく!むやみやたらに攻撃しても意味ないのよ!」

傍に降り立ったのは、脂汗を大量に流しているキャサリンだ。

「とにかく、離れるのよ!」

服を引っ張ってウルから離れようとする。

さっきのとび蹴りが限界に到達させたのか、キャサリンが地に足をついた。

「ちっくしょおおおお!」

俺が側足蹴りでウルの腹を蹴ったものの、威力が足らずに数歩しか下がらない。

「この場にいる中で最弱ですね。あなたが生き残っているのは不思議でなりません」

「下らぬ」

乾が周りに群がっている全ての女性を真横に一閃し、ふっとばす。

「今まで遊んでいたのですか?」

「貴様に明日を迎えさせないために、必要な時間を稼いでいただけだ」

乾の言葉と共にアルトゥールの元に大きな物が飛んでくる。
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