第七世界
アルトゥールは反射的に片腕で破壊した。

「壊したな」

いつの間にか部屋の中に立っていた、どこをほっつき歩いていたのか解らない楓だった。

「楓!」

「何だ、カツラを取るのは反則じゃないか」

「いやいやいや!そんな事を言ってる場合じゃねえだろ!」

「君の悪いところは頭だけではないようだ。そのすぐに焦った突っ込みをする癖は直した方がいい」

今の状況を見ても、呑気な態度は変わらない。

「あなたは広間にはいませんでしたね」

「君の退屈な話を聞くつもりはなかったんだ。それよりも、君は何を壊したか確認したのか?」

「何です?」

「ああ、いいんだ。別に教えるつもりはないから、楽しんで乾と闘えばいい」

「何を、投げたんですか?」

「そんなに知りたいのか。君は欲張りだな。本当なら学校業務をこなす事を交換条件にしようと思ったんだが、明日を生きられると限らなくなった君には特別教えてあげよう」

「まさか、そんな馬鹿な」

「教える前に察しがついたのか。だけど、出来の悪い生徒もいるからな。正解は君が壊したのはもう一つの命である棺桶さ」

もう一つの命?

「ほら、あそこの馬鹿はこれだけのヒントを与えたのに今だに理解が出来ていない」

「何故、あなたが存在を知っているのですか?」

「敵地に向うのに何の情報も持たずに来ると思うのか?」

「私は誰にも教えたつもりは」

「情報なんてそこら中に落ちているさ。ただ、正しい情報を見つけるのには苦労したがね」

「調べたからといって、自分で正しいと思っていても、本当に正しいという確証はないですよ」

「君は間抜けか?君との会話で信憑性が帯び始めている。信じる事が出来ないのなら、乾の刀に斬られて確かめればいい」

アルトゥールのすぐ傍には抜刀した乾の影が存在していた。
< 128 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop