第七世界
「逃がすかよ!」

俺が走り出し、逃げるアルトゥールを捕まえようとする。

しかし、下に倒れている女に足を掴まれて大きくこける。

「いて!」

おもいっきし顔面を床に打ち付けて、顔をあげると目の前には大きく口を開けた女がいる。

「インザホラー!」

口に当たらないように眉間に拳をぶつけて、足を掴んでいる女の眉間にも蹴りを入れる。

「ぜえ、ぜえ、逃げる際にも無駄に操りやがって!」

窓のカーテンが風で揺れ動き、その場にはアルトゥールの姿はなかった。

「逃したか」

地上に降り立った乾は刀を鞘に収める。

アルトゥールが消えた今、女性達が動く気配はなかった。

それは、ウルにも当てはまるのだが、彼女は魂の抜け殻になっていた。

生きている事は確かなのに、精神が持たなかったのか。

「ウル!ウル!」

ウルに駆け寄って声をかけてみるが、死んだ魚のような目をして返事は返って来ない。

「精神科医に見せるしかないな」

隣からウルの様態を見ている。

「あの、っていうか、早く、病院に連れていって欲しいんだけど」

そういえば、キャサリンの腹に爪が刺さったのを忘れていた。

ウルの次に重傷だといえる。

「君が病院に電話して状況を伝えてくれないか」

楓が携帯をキャサリンに投げつける。

「え、けが人にやらせるの?」

「自分の事は自分でしたまえ。ああ、神崎の病院で頼む。それで、ティーナはどうした?」

「仮面の男に託した」

「そうか。なら問題はないな」

「全く持って、根拠がないと思うんだがよ」

「彼は君より上手く動くさ」

外を見ると、雨が小降りになっていた。
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