第七世界
少なくなった雨音と共に屋上を伝いながら逃げている一つの影。

男の上半身は裸であり、頭髪は銀である。

そして、路地裏に降り立つ。

「見破られるとは、予想外ですね」

次の巣の事を考えながらも、路地裏を歩く。

警察に見つかって変態扱いされても、逮捕される事はないだろう。

何故ならば、彼はヴァンパイアであり、警察を簡単に始末できるからである。

「今日一日で、余計にストレスが溜まってしまいましたよ」

「そうか」

銀髪の男とは別の影が前方に立っている。

影は仮面をつけて、中華服を着用しているようだ。

「またストレスの要因ですか」

仮面の男が声を上げる事はない。

ヴァンパイアは男の強さを読み取る事が出来た。

だが、すでに攻撃の届く範囲に仮面の男が迫っていた。

もし、ヴァンパイアが自分を守る盾を用意したとしても無意味だろう。

逃げる事も不可能であり、闘うしかない。

「私は生きます!」

爪を突き刺すために腕を伸ばそうとする。

「雷掌」

すでに構えていた腕から掌底が放たれる。

伸ばしたが爪が掌底によって破壊され、そのまま胸へと打ち込まれる。

後ろへ吹っ飛ぶ事はなかったが、膝をつき倒れた。

男は背中を向けて、路地裏から遠ざかる。

ヴァンパイアは瞳を開けたまま、立ち上がることはなかった。

そう、ヴァンパイアであるアルトゥール=アルトマンの心臓は停止していた。
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