第七世界
「具合はどうだよ?」

「まあまあ」

「そうか。今日は天気もいいし、外歩いたらどうだよ?」

「足、疲れる」

「若い内からそんな事言ってると、必要な時には匍匐全身でしか移動できなくなるぜ」

「じゃあ、負ぶって」

「それ、究極に意味ねえ。お前は足が不自由でもねえだろう」

「はあ、恭耶、本当に我が侭」

「お前な、我が侭の意味を知ってるのか?」

「林檎、むいて」

俺の前に林檎を持ってくる。

「しゃあねえな」

目の前にいるのは、ウルリカ=アルトマンだ。

しかし、ソレは本名ではなく偽名だ。

本名は誰も知らない。

彼女がどこに住んでいたのかも素性全てを、知る者はいない。

知っているはずの本人ですら知らない。

本人が知らないのは記憶喪失だからだ。

元より記憶があったのか解らない。

彼女が本当の事を告げられた時に色々な事が蘇ったのだろうか。

しかし、それだけで記憶喪失になるか?

アルトゥールが残酷な映像を脳内に流したのかもしれない。

それがよほどのショックで心が耐え切れなかったのか。

憶測でしかないのだがな。

今、調べているところなのだが、まだまだ時間はかかりそうだ。

そして、病院でも色々な方法を試しているという。

難しい事はよく解らないので、語る事は出来ないのだがな。
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