第七世界
埃臭く、物が乱雑した体育倉庫の中で一時間を過ごした。

今の清掃を損得勘定論で考えるとしよう。

『損』が単位とすれば、『得』は目の前の状況が綺麗になって、次の人が使いやすくて良かったなという事だろうか。

明らかに、損が大きいような気がする。

俺は学校の物まで整理整頓したいというような究極の綺麗好きでもないし、次の人の事なんか知ったこっちゃねえんだよ。

単位がなければ、留年してしまうという恐怖が待っている。

その時、責任を取るのは、もちろん自分だという事。

実際のところは楓が圧倒的多数で悪いんだけどな。

いや、人のせいにする卑怯な思考を取り除こう。

プラス思考で行くのなら、楓のために働けて良かったと思うべきだろう。

これで、楓の好感度が上がって、今朝の言動を含めればプラスマイナス0。

だが、それは果たして良かったと言えるのか?

「そんな事、あるわけねえだろうが!」

プラス思考になって俺の状況が一変してくれるかと思えない。

楓に謙ったところで、『埃を吸って、頭がおかしくなったのか?』といわれるのがオチだ。

「はあ、頭いてえ」

整理を終わらせて倉庫から出ようとすると、体操服姿の佳那美が入ってくる。

体操服といえば大体の高校はジャージなのだが、我が校は狂気に満ちているのか、半袖ブルマである。

ある程度、抗議文も来ているのだが、校長が譲る気配がない。

俺はブルマを見た事で、明日はいい事あるかな?と思えるような人間ではない。

ああ、白い生足だね、ぐらいの物だ。

「鷹威君、人の足ばかり見てやらしいよ」

「いや、鬼だけあってしなやかな足をしてるなと思ってな」

「そうかな、って鬼は関係ないよ。それより、何してるの?」

「体育倉庫の整理」

「ああ、皆木先生のお手伝いだね」

「お手伝いという単語を使うのは間違っているぜ。こんなもん、強制労働だよ」
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