第七世界
佳那美が編み模様のボールの入った大きな籠を持って行こうとする。

「お前、一人かよ?」

「今日、相方が休んじゃってさ。他の人のやる気がないから、一人でやってんの」

「誰かに手伝ってもらえよ」

「別にいいんだよ。私、力あるしね」

籠を片手で運んでいくところ、恐ろしく感じる。

「そういやよ、お前、鬼だよな?」

「鷹威君、まだ何か言うつもり?」

「そうツンケンすんな。お前に聞きたい事があるだけだぜ」

「何?」

「ヴァンパイアの存在は知ってるか?」

佳那美の引いていく足が止まった。

「ヴァンパイアねえ」

「知ってるのか?」

「私もヴァンパイアなんだけど」

「お前は鬼だろ」

「それ、日本での名前。一緒の存在に変わりはないよ」

「でも、お前、血を飲まないじゃないか」

「飲んでるよ」

「はあ?」

「輸血パックだけどね」

「ちょっと待てよ。じゃあ、お前にも血を欲しがる時があるってわけかよ?」

「本当、困るよ。私の場合、月の日の殺戮衝動が極端に大きくなるし、血を飲めば殺戮衝動が収まるかと思えば収まらないし」

「でも、薬で収まるんだろ」

「そうそう、あの仮面の人、何でそんなの持ってたのかな」

「わからねえけど、あいつは敵でもなけりゃ、味方でもねえ」

ティーナさんを助けた理由も、よく分からんしな。
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