第七世界
「俺の財布、勝手に持って言っただろう?」

「何の事や?」

よく顔に出るせいか、こっちを向こうとしない。

「お前な」

刹那の頭を持って、強制的に俺のほうに向かせる。

顔中、冷や汗でいっぱいになっている。

「正直に話せよ」

「し、知らんもんは知らん!」

「明らかに知っているとしか言いようのない態度だろうが!財布を返せ!じゃないと、喫茶店にも行けねえだろうが!」

「佳那美ー、恭耶がいじめるんや!」

「刹那ちゃん、私は喫茶店の味方なの」

佳那美は刹那の懐を探る。

「く、くすぐったい!」

「あれ、何もないよ?」

「どういう事だ?」

「ボク、何もしらへん」

本当に何も知らないというのか。

「財布を途中で落としたなんて、口が裂けても言われへんわ!」

「マジかよ、マジで言ってるのかよ!?」

あの中には今月の生活費やら、希望やら夢やらが詰まっているというのに。

「ふざけんなよ!喫茶店とかそういう以前の問題だ!今月、どうやって過ごすんだよ!」

ちなみに、冷蔵庫の中には何も入っていない。

餓死するのは必然的だ。

親に生活費を貰ったばかりなのに、もう一回欲しいなどと言えるわけがない。

「恭耶、うちら、バイトするしかないわ」

「バイトするにも履歴書を買うお金がいるんだぞ!」

「何や恭耶、貯金もないんか。しけてるわあ」

「話を逸らそうとしてんじゃねえ!」

このままだと、隣の家の楓様に土下座しなくちゃならなくなる。
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