第七世界
「佳那美、すまん、俺は財布の味方」

俺が頷こうとすると、佳那美は俺の肩を両手で掴む。

「鷹威君」

鎖骨と肩甲骨の軋む音が聞こえてくるのと同時に、痛みが襲う。

「ごおおおおおおおおおお!」

「約束は約束だよね?」

笑顔になりながらも、俺の肩を潰す気は満々だ。

「いたたたたた!」

ここぞとばかりに鬼の力を発動させている。

「ま、待て待て!いい案があるから、衝動的になるな!」

「へえ、馬鹿なりに考えたんだ?すごいねえ」

「ちょっと、狂気の人格が表に出てるつうんだよ!」

「恭耶、後でボクも楽しませてもらうわ」

刹那が両手の指を鳴らしながら、今か今かと待っている。

「元はといえば、お前のせいだろうが!自分に罪がないと思うのは、俺以上のアホじゃねえかよ!」

「何言うてんねん!ボクの実力を知らんからそんな事言えるんや!」

すでに負け犬発言じゃねえか。

「どうすんの?デートしないなら、財布は海江田にでも渡すけど」

「デート、するぜ」

「両手に花の上にまだ花を手に入れたいなんて、性欲マックスね。じゃあ、放課後に校門で」

美祢は俺の財布を人質にしたまま、去っていった。

「っていうか、俺、昼飯食ってねえんだけど」

知らず知らずの内に筋肉が悲鳴を上げている。

「で、鷹威君、いい案って何?」

「それはだな、秘密だ」

別段、凄い案でもなく、普通の案であり、明日責められないようにするための物だ。

「結局、相良先輩とデートしたいだけなんじゃないの?」

「あんた、財布を人質に取られただけでそこまで落ちるなんて、思いもせんかったわ」

「ちょっと待てよ。お前らな、俺が相良美祢とデートする事に、何でそこまで反対するんだ?」

イケメンでもなければ頭がいいわけでもなく、果てには最弱と言わる俺に付きまとう理由は何もないはずである。
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