第七世界
放課後、珍しく楓は何も仕掛けてくることはなかった。

一体、何を企んでいるというのか。

「よう、鷹威」

「お前は、俺のナレーターを無駄にするつもりかよ?」

背景になったはずのモブが笑顔で話しかけてくる。

「何言ってるんだよ。あれくらいで俺がくたばるなんて思っちゃいないだろうな」

「モブ、お前はすごいよ。さすが、背景、世界、勝ち目がないな」

「だったら、言うぜ!俺の名前を!」

「だが、俺は背景に語りかけるほど、暇じゃねえ」

「ひ、ひでえ」

俺は打ちひしがれているモブを無視して、校門へと向う。

「恭耶!ほんまに大丈夫なんか?」

「ま、財布のためであり、お前に殴られたくねえしな。問題ないぜ」

「ボクがボカスカ殴るような言い方すな」

「殴られてるんだよ!毎日毎日!それだけで俺の脳細胞がどれだけ死んでると思ってるんだよ!」

「うわ、細か!女に殴られる事も許されへんようじゃ、男として懐が狭いわ」

「確かに女はか弱い生き物だよ。だけどな、男が女に無意味に暴力を振るわれていいというのは話がちげえんだよ。この際だからはっきり言うが、男だって訴えるくらいの人権はあるんだよ。そう、幼女に撲殺されそうになったら、訴えるくらいの!バハ!」

一本背負いを繰り広げ、床へとたたきつけられる。

「アホ!恭耶の場合は殴られてこそオアイコや!」

背骨に痛みを覚えながら、俺は立ち上がる。

「いつつ、お前は口で言い返せないのかよ?」

「ふん、毎回同じ事言わせな!恭耶が」

「わかったわかった。たく、先に喫茶店に行ってろ」

とりあえず、相良美祢に会いにいかなくてはいかない。

俺が教室から出て階段を降りようとすると上の階から声が聞こえてきた。
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