第七世界
タオルを貸してもらい、身体を頭や身体を拭いて、席へと戻る。

佳那美はバイトに戻っているが、チラチラと様子を伺っているようだ。

「遅かったね」

美祢はアイスコーヒーを頼んでいるようだ。

「色々とな」

「さっきの子と何やってたの?」

訝しげな目つきになりなっているが、誰のせいだと思っているんだ。

「何もしてねえ」

何もしてないところに手首を折られそうになったわけだが。

それは、口を避けてもいえなかった。

「あ、番号交換しようよ」

美祢は鞄から携帯を取り出す。

「俺は携帯を持たないんだよ」

「えー、今時持ってないの!?」

呆れているようが、驚いているのも確かである。

「そんなに驚く事でもねえだろう。必要ねえんだよ」

「持てばいいじゃん。便利だよー?もれなく、私のアドレス付き」

教えれば、確実に迷惑電話がかかってくるに違いない。

「あのよ、すまねえが、俺はここでリタイアさせてもらうぜ」

もう、後戻りは出来ない。

「リタイア?」

「ああ、デートは終わりって事さ」

「ふうん、それでいいわけ?」

俺の財布を見せ付ける。

「構わねえ」

覚悟は決めた。

俺の行動一つで、困っている奴等がいるという事は理解している。

「ふうん、君は約束を守らないんだ?」

そこを突かれると、痛いところだ。
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