第七世界
「約束は守った」

「え?」

「デートっていうのは、どれだけ一緒に長くいたかじゃねえ。愛情をいかに深めるかって事になる。美祢、お前はここに来るまでに、俺と手を繋いで愛情を深めようとしただろ?そりゃ、もうデートだ」

我ながら見事なその場しのぎの言い訳だ。

今の場合は、屁理屈上等。

「面白くない言い訳だね」

「面白くなくても、やる事はやったぜ?」

「そんなに私といるのが嫌なんだ?」

これからの学園生活はどうなるかは解らないな。

「好き好んで一緒にいたいとは思わねえな。人様の財布で人を脅そうとする奴なんかとよ」

女だとかは関係ない。

犯罪紛いの手を使ってくる人間なんて、信用がおけるものじゃない。

「恭耶君って、怖い物ないんだ?」

誰かに狙われるといった事を示唆しているのか。

「怖い物だ?んなもん、近くに山ほどあるわい」

今もこちらを見ている鬼の姉ちゃんとか、バーサーカーなチビッコとかな。

それ以上に、怖い物なんてありはしない。

「ここで退く気はねえ。帰りたけりゃ帰りな」

今月の食費は諦めるしかないだろう。

お腹を空かしたバーサーカーなチビッコが暴れまくるだろうが、こうなった以上は被害を受けるしかない。

でも、やっぱ嫌だな。

「帰る」

俺が自分の未来を想像していると美祢は立ち上がり、店から出て行ってしまった。

俺の財布を持って。

「オウマイガット!」

どうする?

今月は食費以外の物は払っているとはいえ、死んだも同然だ。

四つんばいになりながら、絶望を感じ続ける。

「鷹威君?」

「俺は、お腹を空かせて死んで行くんだ」
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