第七世界
落ち着いた俺は余裕のある金でホットケーキを頼んだ。

佳那美のオバさんが作ったホットケーキは絶品だ。

おばさんも鬼なんだろうけれど、手先は器用な鬼なんだろう。

鬼がある故に凶暴な部分はあるんだろうけれど、いつもじゃない。

衝動が激しい夜には、佳那美のように一人でいたのだろうか。

「しかし、本当に美味いな」

「恭耶、ボクにも頂戴や」

刹那が口をあけて待っている。

しかし、甘やかしはよくない。

刹那に限っては特にな。

「やらねえよ」

俺は刹那の口の中に氷を放り込む。

「むぐ!」

急激に冷たい物がきたせいか、驚きで目を開いた。

「何するん!?」

「お前はさっき飯を食ってただろうが!しかも、お前の金じゃなくて俺の金だろうが!」

「恭耶はホンマ器がちっちゃい男やわ」

氷を含みながら不満の声を上げた。

「お前はよお、俺の器がどれだけ広いか、わかってんのか?」

財布を盗んだ事も許してるんだぞ。

全部を許せというのは、器の大小の問題ではない。

「お前はいっぺん、自分を見直せ」

「恭耶こそ見直したほうがええんちゃうん?」

「お前な、いい加減にしろよ!」

机を叩いて立ち上がる。

「お前は今日、どれだけ迷惑をかけたかわかってんのかよ!」

俺は店内に響き渡るほどの声で叫んだ。
< 163 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop