第七世界
「全く」

俺は刹那に背中を向けた。

「あ」

「と見せかけて、タックル!」

刹那が声を出したのと同時に、日々の修行で鍛えられた足腰でタックルをかまそうとする。

しかし、見事なほどの膝が顔面にめり込んでいた。

「バダック!!」

俺は再び後方へと飛んでいく。

「君は何をやっているんだ?」

刹那の前に立っているのは、黒のジャケットに白のブラウス、青のジーパンを穿いた楓であった。

「楓こそ、何で、刹那の前に立ってるんだよ!」

「質問を質問で返すなんて、君には教育が行き届いてないようだな」

「そりゃあ、楓の教育が悪いんじゃないのかよ」

「残念だな。君が私の教育に満足していないというのなら、私は君に点数をやる事はできない」

「おいおいおいおいおいおい!何でそうなるんだよ!普通は勉強を見るとかするだろ!」

職務怠慢という文字がよく似合う。

「こっちは一生懸命しているのに内容を否定されては、点数をつけるやる気が出せないな。諦めてもらおうか」

最初からするつもりのない事を平気で言ってしまうのが楓なんだよな。

「教師の言う台詞じゃねえだろ!って、刹那、逃げようとするんじゃねえ!」

刹那はチャンスとばかりに、楓の背後を走って言った。

「まあ、待ちたまえ。君には私の心を傷つけた慰謝料として喫茶店でお茶を差し出してもらおうか」

「生徒にたかるのかよ!?」

「人聞きの悪い事を言うんじゃない。君に女性のエスコートの仕方を一から教えてやるつもりだ」

「ありがた迷惑だっつうの!」

「まあ、そういうな。私は君に教えられる事を嬉しく思うぞ」

ただ単に、喫茶店で飲み物を飲みたいだけなのではないのか。

俺は襟首を引っ張られながら、再び佳那美がいる喫茶店へと連れ込まれた。
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