第七世界
解放されたのは、一時間後の事であった。

佳那美からはジト目を向けられながら気まずい思いをし、抜け出せた時には暗闇に包まれていた。

「ふう、刹那の奴、帰ってるのか?」

心配が加速し、俺は走り出した。

「くそ、せっかく見つけられたのに!」

周囲や学校を探索し、公園も見回った。

一時間ぐらいは探しただろう。

肝心の実家はまだである。

「一旦、家に帰ってみるか」

家の近くまで来ると、明かりが見えた。

刹那が帰っているのだろうか。

俺はたかる心臓を落ち着かせながら、家の中へとはいった。

家の中からは、何かしらのニオイがしてくる。

キッチンを覗けば、小さい女の子の後姿が見えた。

「刹那」

「何や、恭耶、遅かったやん」

昼間の様子とは打って変わって、ケロっとしている。

エプロンをつけて、料理を作っているようだ。

「お前、いつ帰ったんだよ?」

「恭耶が楓と絡んでる後や」

何かしらを含んだような去り方するから、他の場所で時間を潰してるかと思えば、全くそんな事はなかったのか。

「全く、お前は、心配かけんじゃねえよ」

「勝手に心配したのは恭耶やんか」

いつもどおりの刹那だな。

「飯、作ってんのか?」

「恭耶になんか食べさせたれへんからな」

いつもの殺人生物兵器を作っているのかもしれない。

こっちから遠慮したいところだ。

しかし、俺も成長したと思わせなければならない。
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