第七世界
楓の後ろ姿だった。

サボりが多いから、残業しなくちゃならない程の仕事量が残っているのかもしれないな。

俺には気づいていないみたいだ。

何を言われるかわからないので、気付かれない内に鍵だけ取って去ろう。

鍵に手を付けたときに、楓がこちらを向いた。

「怪しい奴だな」

「ち!」

楓の気配を読む力を侮っていた。

「まだ帰ってなかったのか」

「鞄がなけりゃ帰ることも出来ないぜ」

「君の忍び込む様は泥棒さながらだな」

生徒を泥棒扱いするとは何を考えているんだ、このボンクラ教師!と言いたかったが言えるはずもない。

俺は非常に不味いことに気付いた。

それは遅いぐらいだ。

顔面に楓のストレートが決まっている。

「あいたた、もろヒットさせるなよ」

顔が鼻血で血だらけになってしまった。

楓にはある能力が備わっている。

千里眼、確かそういったっけな。

皆木の一族が使える能力らしく、人の心を見透かす厄介な代物だ。

「能力がなくても十分に勝てるがな」

「また読まれてやがる」

「顔に出ている」

楓の前では不利になるような思考を巡らせるのはよそう。

「君に出来ればいいけどな」

「それより、俺に何も言わないのか?」

今日の朝の出来事で何か言われると思ったが、スルーされているようだ。

「何か言って欲しいのか?」

「ややこしくなりそうだから、何も言う必要はねえや」
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