第七世界
「ひい、いてえ」

いつもの数倍の威力を感じずにはいられない。

「恭耶がもっと良い起こし方せんのが悪いんや」

ご機嫌斜めではあるものの、料理の基礎をしっかりと聞いている。

「お前が素直に起きてりゃ良かったんだろうがよ」

「何?乙女のファーストキスを奪っといて、その言い草はなんなん?」

「さっきから謝りとおしても、状況が変わらないからだろうがよ。それに、人を散々ボコボコにしといて、更に口でも攻撃してくるなんていうのは、乙女とはほど遠いという事を心に刻んでおいたほうがいいと思うぜ」

「恭耶は、今日一日はボクのいう事を聞かな許さへんからな」

しかし、今日一日でどれだけの精神力を使う事になるのか。

「んで、ちゃんと理解してるのかよ?」

「分かってるわ!僕を誰やと思ってるん?」

刹那は真面目に取り組めば出来る。

料理にも結果は出ているのは確かなのである。

「これで、どない?」

オリジナルだの何だのを全て取り払った玉子焼き。

最初の方にしては、良い出来だとは思う。

料理を作る事が好きだというだけあって、料理に対しては真摯な姿勢を見せているようだ。

味の方も悪くは無い。

「お前な、ちゃんと出来るんなら最初からそうしろよ」

「ボクはオリジナル料理で勝負したいんや。誰かが作った品物なんてつまらへんねん」

「それで材料が無駄になったら、費用がかさむんだよ。それくらい分かるだろうが。それに、俺はちゃんと食べられる物だったら、刹那が作った物でも大喜びだっつうの」

「そないか」

チラ見した後に、刹那は自分の作った玉子焼きを食べた。

反応は変わらなかったが、俺には刹那が驚いているようにも思えた。

多分、ここまで上手く行くとは自分でも思っていなかったのだろう。
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