第七世界
帰り道。

俺たちは普通に道を歩いていた。

「まったく、これといって何かが起こる気配はないな」

「ちょっと、何かが起こるような言い方しないでよ」

恵美子は俺に寄り添うように歩く。

「大丈夫だ。すぐに会える」

「先生、脅かすのはやめてください」

「私は本当のことしか言わない」

道の真ん中で楓が足を止めた。

周囲に人気はない。

だが、凍てつくような不穏な空気は嫌ってほどに感じてしまう。

「きゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!」

大きな奇声が響き渡る。

「来た」

楓が上空を見上げると同時に、俺たち二人も顔を上げる。

そう、空中の月に映るのは人影。

手には刀を持っているようにも見える。

「きゃきゃきゃ!」

降り立った人影は三十代くらいの男で、衣服はボロボロだ。

浮浪者だろう。

しかし、浮浪者とも思えないほどの運動神経でこちらに突進をかける。

楓は軽く回避したが、腕には刀によって出来た切り傷がついている。

「予想よりも早いな」

「楓!あれは何なんだよ!?」

「説明したいところだが、その暇はないな」

次に襲い掛かるのは、俺の方向だ。

「香坂!」

俺は香坂を押して、浮浪者と対峙した。
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