第七世界
「家が一番ゆったりできるぜ」

空しい独り言を口ずさみ、飯の支度をした。

自分の作った飯を食うっていうのは悲しいものがある。

最近、楓のシチューを食ったが、誰かと一緒に食べなきゃ意味がないんだよ。

叶わぬ事をほざいても意味がない。

腹が減っているので簡単な物をさっさと作ることにした。

料理は一人暮らしの間にうまくはなった。

人に食わせて美味いと言わせる自信もある。

小手先だけじゃなく、ちゃんと気持ちも込めてるぜ。

カレーを作って、一人だけの食卓で食べた。

一人の食卓って無言で薄気味悪い。

親とは別々に暮らしている。

気に入った学校が皐月鳴で、他県にあったので一人暮らしすることになったのだ。

一軒家を用意してくれるのはありがたいが広すぎる。

お金は銀行の口座にあって、生活が出来てるんだから問題はない。

あまり思い出すこともなく食事を済ませ、二階にある自分の部屋に戻った。

ベッドで寿司漫画を読みながら寛いでいると、インターホンの音が聞こえてくる。

「俺の空想タイムを潰そうとしてる奴は誰だ？」

重い身体を起こして、玄関に向う。

「女ならまだしも男だったら承知しねえぞ」

ドアを開けると暗闇と静かさだけがある。

「誰もいないではないか」

イタズラかと思い、ドアを閉めることにした。

「ちょっと待って、ちゃんとおるわ！」

ドアを閉めた後に聞こえる女子の声。

「おかしいな」

もう一度ドアを開け確かめる。

やはり誰もいない。

「性質が悪い」

もう一度、有意義な時間を過ごそうとドアを閉めようとした時、股間に激痛が走る。

「もげちゃうぜ、ファッキュー！」

股間を押さえて、涙目で挙動不審な態度を取る。

「無視するからや」

声の主は予想外な高さから話しかけてきていた。
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