第七世界
「お前、よく俺の家を知ってたな」

「えっと、まあね」

部屋の外から中に入ってこない。

「傷の事で来たのか?」

それ以外に俺に用事などないだろう。

以前は名前すらお互いに覚えてなかったんだからな。

さっさと済ませるなら済ませてもらいたいところだ。

正直、色々と聞きいたり言ったりしたせいで、疲労感が半端じゃない。

しかし、中々、切り出さない。

「言う事があるならよ、言えよ。お前も暇じゃないだろうからな」

「ああ、うん」

しかし、切り出さない。

一日考える時間があれば、行動に移すくらいは出来るだろう。

あまり、慣れていない状況だったりするのか。

男の家に来る事が慣れてないんじゃない。

人に頭を下げる事が慣れていないのだろうな。

「言えないのなら言えないでいいけどよ。お前さ、後輩いじめはやめたのかよ?」

「やめた」

あれだけのことがあれば、自分のやってる事がどんな事なのか理解できないほうがおかしいだろ。

「たく、お前は、人の上に胡坐をかいて寝るような女だろうが」

「は?それどういう意味よ?」

香坂が顔を上げた。

「そんなしみじみするようなタイプでもねえだろってこったよ」

「はあ?一日で何が分かるんだよ?」

「一日見た中で、わかる範囲で言っただけだっつうの。お前の事、全部なんてわかるわきゃねえだろうが」

「あんたって、どんな時でも、そんな感じなわけ?」

「悪いかよ?」

「頭がね」

「そのナリのお前に言われたくねえよ」
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