第七世界
「鷹威って、無駄にもったいない事してるよね?」

「今のままでも困っちゃいねえよ。それより、お前も相当もったいない事してるけどな」

「え?」

香坂が固まった。

「もうちょっと押さえ気味にすりゃ、結構良い線言ってると思うぜ」

「嘘っぽいけど、ありがとうと言っとく」

香坂は背中を向けて帰ろうとする。

「前のは明らかに皆木のせいだけど、鷹威には感謝してるよ。ありがとう」

何に対してありがとうと言っているのか。

守った事に対してのありがとうなのか。

いじめがどういう物かを気づかせてくれた事にありがとうなのか。

「そうかい」

最終的に妖刀を押さえつけたのは楓と乾なんだけどな。

乾は女の子にちやほやされたいからやっているわけではなさそうだ。

楓が吸血鬼と関わる理由は知らない。

簡単な理由とすれば、自分が吸血鬼だからになる。

吸血鬼の事は吸血鬼でしか解決できないと踏んでいるのかもしれない。

しかし、楓の性格からすれば、面倒事はしない。

上記の理由以外で、何故、あそこまで吸血鬼に関わるのか。

俺は楓の事は良く知らない。

付き合いがあるといっても、三年程度だ。

家族構成や友達なんていうのは知らない。

知ってるのはティーナさんくらいだ。

知ろうともしなかったけどな。

「うーん、背中が痛いぜ」

知らない事を無理に考えても答えなんて出ないし、傷も痛い。

途中であきらめて、目を瞑った。
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