第七世界
俺は刹那の顔を見つめる。

「刹那」

「ちょ、何するつもりなんや?」

「この雰囲気なら一つしかないだろ」

「い、今朝やで?それに、心の準備が」

俺は無言になりながら顔を近づけていく。

抵抗はしないが、怯えてるようにも思えた。

そういえば、春に何かがあった。

刹那にとっては冗談では済まないという事なのか。

そう思っていると、襟首をつかまれ引き離される。

「うが」

「さあ、時間だ」

声の持ち主は楓だ。

「何で、こんな朝っぱらから」

「今から行かないと実家に間に合わないからだ」

「俺はまだ準備も済ましてないんだぞ」

「大丈夫だ。君の女装服は用意してある」

「それだけはごめんだ」

俺は急いで服に着替え、用意を済ませた。

「さあ、行くぞ」

俺は引っ張られていく。

「服が伸びるじゃねえかよ」

「多少伸びるくらいがファッションだ」

「何の基準だよ、それ」

車に乗せられそうになったところで、付いてきていたパジャマ姿の刹那の手をつかんだ。

「え?」

俺と刹那は後部座席で重なるように、乗った。

「旅は道ずれ、世は情けって言うだろ?」

「何言ってるん、ボクは皆勤賞狙ってるんや!」

「出発するぞ」

楓の声がかかると、車が走り始める。
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