第七世界
周囲の風景が流れていく。

刹那は不機嫌な顔をしながら、無言になっているようだ。

「恭耶君、久しぶりー」

俺がどうするか考えていると、助手席からブロンドでウェーブのかかった髪を持つ女性が顔をのぞかせる。

「ティーナさん?」

そこにいるのは間違いなく、医師であるティーナ=神崎さんだ。

以前はアルトゥール=アルトマンの屋敷で一緒に逃げ回り、最近では吸血刀の怪我の治療を行ってくれた人だ。

特殊能力な能力を持っており、人を治癒する代わりに自分の寿命を削るというものだ。

吸血鬼にある能力なのかもしれない。

「楓に無理やりつれてこられたのか?」

「ううん、自分の意思だよー」

「君は私が無理矢理連れてくるとでも思うのか?」

「ティーナさんは忙しいんだぞ」

「君はどうしても、吸血鬼達の餌食になりたいらしいな」

「まあ、安心しろ。俺はしっかりティーナさんの命は守るつもりだ」

楓の話はスルーしながらも、ティーナさんにゴマをするという奥義を発動させる。

「恭耶君、ありがとー」

いつもながらにまぶしい笑顔が胸に刺さる。

しかし、隣から発せられる不機嫌なオーラが周囲を包み込んでいた。

「刹那、その顔、どうにかならねえのか?」

「鼻の下伸ばしてるあんたの顔もどうにかならんの?」

いつも以上に目つきが悪くなっている。

「刹那ちゃんだったよねー、今日はよろしくねー」

「よろしく」

刹那は、不機嫌ながらにも挨拶はちゃんとする。
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