第七世界
「どうもしないのにも関わらず、お前は刹那をここに連れてきたというのだな?」

「お前が刹那の事を理解してるのは、お前の態度からして分ったぜ」

俺は箒を投げ捨てた。

「だからといって、俺がお前の望むような事をすると思うか?」

「望む事、か」

独り言のように呟く。

「何も理解していないお前では、何も出来はしない」

「何?」

「しかし、全てを理解したところで、今のお前では何も出来はしない」

「質問に答えてねえし、矛盾してるだろうが」

「お前には何も出来ないという事を理解しろ」

「ざけんなよ」

仮面の男から伝わるプレッシャーは計り知れない。

鬼の物でも、吸血鬼の物でもない。

「俺はお前を倒さなくちゃ、刹那を連れて行くってこったな」

「それだけは理解したようだな」

「お前みたいなボンクラに刹那をやるかよ!」

拳を握りしめ、構える。

仮面の男は態度を変えるつもりはないらしい。

俺は立ち向かう。

男の言うとおり、勝ち目はないだろう。

だからといって、逃げるわけにはいかない。

刹那を誰とも分らない人間に渡すわけには行かない。

拳をボディーに放つ。

しかし、俺の拳が仮面の男を屈服させる事はない。

腹には届いているはずなのに、仮面の男には効いてはいなかった。
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