第七世界
「邪魔です、あなたも行きなさい」

仮面の男と対峙してる梓さんは、抑揚のない声で俺に告げた。

「やだね」

「馬鹿な事を言うんじゃありません。あなたは、あの子を守るという使命があるのでしょう?」

「確かにそうだけど。女一人戦わせて、男が背中見せるなんて、納得出来るかよ」

「役に立たないと聞こえませんでしたか」

「あいにく、耳が悪くてね」

足に気合を入れ、俺は梓さんの隣に並ぶ。

「盾くらいにはなれるさ」

「分りました」

そういいながら、梓さんの裏拳が飛んでくる。

俺はしゃがみ、紙一重で回避した。

「お、おいおい、正気か」

「避けましたか」

「まさか、俺をどうにかするんじゃないだろうな?」

「いえ、今の一撃をどうにかできないようじゃ、盾にすらなりませんから」

梓さんが冷たい目で俺を見下ろす。

さすが、吸血鬼の一族だけあって、容赦がない。

「本当に、先方には申し訳ない事をしてしまいました」

着物の隙間から生足を出し、構える。

「全て、あなたのせいですよ」

仮面の男は律儀に待っていたようだ。

「一度だけ言う。邪魔をするな」

「邪魔?それはあなたの事ではありませんか?」

仮面の男は黙る。

そして、水面のごとく、静かに動き出した。
< 233 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop