第七世界
「菩薩陣」

何が起こったわけでもない。

しかし、攻撃すれば、何かが起きそうな予感はする。

それでも、仮面の男の動きは止まらない。

「梓さん、今、やるのはやばい」

「しかし、やらなくてはならないようですね」

「しょうがねえ、な」

梓さんが攻撃を仕掛ける。

そして、出てくるのは、カウンターだ。

巌鋼体とは違い、カウンター狙いの技である。

解説してはいるが、俺はすでに仮面の男の一撃を食らっていた。

梓さんの壁になったのだ。

「ごあ」

体を貫かれるかのような痛みが全身へと伝わる。

俺は地面へと倒れる。

再び立ち上がる力はなかった。

薄めになりながらも、梓さんを見上げる。

「こふ」

梓さんは血を吐いた。

梓さんの一撃は顔面に確かに決まっている。

しかし、男に変化はない。

一撃を食らわせた後に、仮面の男が再び拳を放ったのか。

梓さんの腹には内臓を破壊するほどの拳がめり込んでいた。

「見誤りましたか」

梓さんも膝をついた。

思考を読む力があったとしても、意味を成さないほど強力な肉体を持っている。

楓よりも梓さんは強い。

しかし、それ以上に強いのが仮面の男であった。
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