第七世界
仮面の男は俺達の倒れている体躯を通り過ぎて刹那の後を追う。

俺は考える。

俺には何もない。

ただ、肉体が強いだけで、技なんてもってのほかだ。

「技?」

そうだ。

技がないのなら、技をパクればいい。

本物には遠いかもしれないが、やる価値はある。

コントロールっていうのは、自分の事じゃないのかもしれない。

他人の技をいかにコントロールするかが、問題になる。

しかし、立てないものは立てない。

「梓さん、人間には限界があるんだぜ」

「鷹威は人に在らず」

梓さんがつぶやく。

「どういう意味、だよ?」

「吸血鬼を狩る者として、恐れられた一族です」

「俺達の一族が?」

「今ではソレを知る者も少ないでしょう」

「でもよ、そんな片鱗は見せなかったぜ?」

「あなたはまだですが、彼女には片鱗は見えていました」

梓さんの言うことが理解できなかった。

しかし、ふと、記憶の一部が目を覚ます。

「刹那、か」

「そう、彼女の気配はすでに一族の者に近づいていた」

常人では出す事の出来ない行動を刹那は出来ていた。

発頸もその片鱗だといっても良い。
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