第七世界
刹那の恐怖が膨らんでいく。

自らの内にあるのは絶望だった。

だが、希望にすがりつく自分もいる。

人生は痛みばかりではない。

刹那の希望、それが姿を現すこととなった。

「三人で一人を囲んで楽しいか?」

少し離れた場所に男が立っている。

緑の制服を着用し、緑の帽子を被っている。

帽子の影で顔が見えない。

ただ、男の手には黒い木刀が力強く握られていた。

「なんだ、お前は?」

「俺らの輪に入りたいってか?」

「何でもいいから、早く続きしようぜ」

親父達は自分の欲望を解消するために、男を相手にしない。

だが、男は親父達の行為が気に食わない。

静かに木刀を構えて呟く。

「雪・月・花!」

雪で縦に振るい、月で横に振るい、花で突きを出す。

目にも見えない三連の攻撃によって、親父達は痛みで気を失ってしまった。

「美しい」

生まれて始めてみる武の舞。

刹那は見惚れていた。

男は息を切らすことなく、刹那に背中を向けている。

「おい」

見惚れていたとこを急に呼ばれて、気分を害した。

「人が感動に浸ってるのに何よ?」

不機嫌そうに刹那は答える。

「助けてやったのに礼の一つも出来んか?」

「恩着せるためにやったんか?」

「最低限の挨拶も出来んとはな。まあ、いい。何故、こんなところにいる?」

しょうもない理由が恥ずかしくて、刹那は口に出す事が出来なかった。

「今度からは他人に頼らない生き方をするんだな」

男は何も聞けないと踏んで、遠ざかっていく。
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