第七世界
『ごぼ、ごぼ』

外へと起き上がる力がない。

『ぐ、ぐるしい』

「恭耶君ったら、お風呂でもぐりたい年頃なの?子供だな」

佳奈子さんは何かを勘違いしているらしい。

普通に立てばいいのだが、立ち上がる気力が出ない。

『じぬ』

「恭耶君、我慢のしすぎは体に毒よ?」

佳奈子さんは馬鹿なのか?

いや、亜双の家の吸血鬼が馬鹿なんだ。

鬼、だもんな。

よく分ったよ。

そして、しばらくしてから、俺は佳奈子さんに持ち上げられた。

後一歩で死ぬかもしれないところであったのだ。

「ごほ、ごほ、おせえよ!」

叫べる気力があったのかと、自分でも驚きだ。

「恭耶君、吸血鬼になったの?」

「は、はあ?」

「近くに寄るとニオイが恭耶君からしてくるからね。これは、梓姉さんのニオイかな」

「げ、そんなところまで分るのかよ」

「鼻が利くからねえ。でも、そんな状態になるまで血を飲まなくても大丈夫なの?」

「もぐってあがる事が出来ないくらい、大丈夫じゃねえ」

「やだな、根に持つ事じゃないよ?」

「あんたが言うな!あんたが!」

佳奈子さんは疲れるな。
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