第七世界
「君は本当に掃除が好きらしいな」

「お前は本当に人の都合を考えないな」

「冗談だ」

楓が冗談などという言葉を知っていたのは珍しい話ではある。

しかし、楓は鼻で笑った後に告げた。

「君にはもっとプレッシャーのかかる事をやってもらわなければならないからな。それくらいの掃除は冗談で済ませておくさ」

やっぱり、鬼以外の何者でもない。

本物の鬼以上に、ハートが鬼すぎる。

人間の泥臭さを感じずにはいられない。

人間世界に暮らしてきたせいなのか?

それとも、もとより楓の心が元から歪んでいるせいなのか。

「君の心がねじれきっているのさ」

「おいおい、自分の生徒にいう台詞かよ」

「君も少しは考えを改めなおしたほうがいい」

「人の心を読めるのは、お前ぐらいだっつうの」

「楓、先方が来られましたよ」

梓さんが廊下の先から歩いてくる。

おしとやかな風ではあるが、実はあんなに激しい動きも出来る恐ろしいお。

「それ以上の思考は、あなたの首が飛びますよ」

妖艶に笑う素振りを見せる。

それは本気なのだろう。

俺を殺す事にためらいはない。

「分った分った」

楓と梓さんは廊下を歩いていった。

俺が同席することは許されないのだろうな。
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