第七世界
「何かむかつく顔しよるな」

刹那が不満げな顔をしている。

吸血鬼と吸血鬼を狩る者の相性が特に悪く出ているのかもしれない。

俺も、見合い相手からは嫌な感じしかしない。

しかし、これからどうすればいい?

彼氏のフリをするって事は、奪い去る演出でも組み込めばいいのか?

それでは結局、見合い現場に踏み込むしかなくなるわけだ。

「恭耶、ほんまに楓の彼氏のフリするんか?」

「約束だから、しゃあねえだろ」

「どうせ、何かにつられたんやろ」

「あいつが何かを釣るような餌を俺に与えるとでも思ってるのかよ?」

「じゃあ、何で、そこまでするん?」

「気に入らねえからな」

そう、人の事とはいえ、昔からの馴染みが嫌がっているのに放っておくのが気に入らない。

「そんな理由だけで、命張るんか」

「人がどうこう言おうと、それが自分の中で決めた事だ」

「アホ、ちゃうか」

「うっせえよ。だがな、それがお前の場合でも、代わりはねえよ」

「ボクの場合?」

「お前がピンチになりゃ、命張ってやるよ」

「そんな簡単に言うてええんか?」

「その場しのぎかもな」

苦しいながらにも、俺は笑う。

冗談を言いながらも、本気だ。

刹那は何かを考える素振りを見せた。

「幸せなところ悪いのだけれど、邪魔はしないでくれるかな?」
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