第七世界
「ふうん、恭耶君、楓ちゃんの結婚式をどうにかしたいんだね」

笑みを浮かべた佳奈子さんは、よからぬ事を考えている。

「佳奈子さんもここにいといてくれよ」

「何々、おばさんは仲間はずれって事?」

「あのな、俺からしたら遊びじゃねえんだ」

俺が死ぬかどうかの瀬戸際なのに、そんな事は関係ないらしい。

「そっかな?結構、楽しいんだけどね」

楽しそうに微笑む。

笑っているのに冷たい印象を受けた。

どうやら、今の状況を楽しんでいる。

「俺はまったくもって楽しくねえよ。でもよ、約束は守らなくちゃならねえ、その場しのぎにしちゃならねえ約束なんでよ」

「えー、せっかく楽しめると思ったのになあ」

俺の意思が伝わったのか、座りなおした。

馬鹿な亜双家の鬼にしては聞き分けがいいといっていいのか。

ただ、不満そうな顔は変わりない。

『俺』に攻撃を食らっていたのにも関わらずピンピンしているところ、鬼の回復力は半端ではない。

俺は足に力を込めて、部屋から出る。

「恭耶!」

「おいおい、さっさと行かなくちゃならねえだろ」

結構な時間が経っているのに、刹那に呼び止められた。

「戻ってきたら、創作料理食わせたるわ」

絶対に戻りたくないような事を言い出した。

愛の鞭もとい悪魔の鞭で俺をしばき倒して、何が楽しいのか。

「お前の創作料理を食って、俺が元気になるとでも思ってんのか?」

「何や、不満か?」

刹那は俺を行かせる代わりの条件として、創作料理を持ち出したのだろう。

「わかったよ。その代わり、無茶な配分はやめろよ」

「ふん、今度こそボクの料理の奥深さを知ることになるんや」

浅はかな考えで作られた料理の奥を知れば、新たな境地に達することが出来るかもしれないな。

もちろん、この世にはいないかもしれないけどな。
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