第七世界
「皆木さん、これが現状だがどうする?」

楓は動きを止めて周りを見た。

「悲惨な状況だな。だが、牙狼よ、恭耶が死んでない時点で戦いが終わってないぞ」

楓は俺が死ぬまでやらせるつもりらしい。

それは俺を信じているととってもいいが、過労死させる気だ。

ブラック企業体質もいいところだろ。

「恭耶、真祖と対峙するなら、覚醒は早いほうがいいだろう」

覚醒の仕方なんて知らないし、知ってるならさっさと教えてくれ。

「私は吸血鬼側の者だからな、逆の存在の覚醒方法は知らないんだ」

不親切すぎて訴えてやりたくなる。

「時間切れだ」

刹那に向けて、手刀が振り下ろされる。

飛ばされたのは俺の片腕だった。

「いいいいいいい!」

間に合った。

間に合ったが、それを回避させる方法は思いつかなかった。

片腕になりながら、刹那を抱いて廊下を這いずる。

「恭耶?」

刹那の声に返答する事すら出来ない。

涙を流しながら、羽をもがれた蝶のようにもがく。

死なないとは言いがたいが、相手が強すぎる。

逆境で強くなるとかいうのはあるが、あれは方法を知っていたり思いついたりするからこそである。

刹那を抱きしめる腕の力が強くなる。
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