第七世界
いつの間にか眠っていたのか。

朝になり、目を覚ました。

目の前には布団がないし、刹那の姿もない。

俺は目をこすりながら辺りを見渡した。

「ふぁあ、何事もなかったようだな」

立ち上がり廊下に出ると、刹那と鉢合わせた。

「刹那、体の調子はいいのかよ?」

「恭耶がだらしないから、体酷使したったわ」

昨日のか弱さはどこへやら。

相変わらずの減らず口である。

「ま、今のところ手以外異常はないわ」

百歩神拳の反動により拳にはダメージが残り、包帯が巻かれてある。

治るのには時間がかかるらしい。

俺の頭の傷よりも重症だというのだろうか。

「それより、ボクとの約束、覚えてる?」

笑顔で過酷な選択を迫ってくる。

笑っているように見えて、実は仮面をかぶっているだけなのかもしれない。

「うーん」

「どうなんよ?」

俺は覚えていないといいたい。

約束の物体を出来ることなら、ブラックホールの中へと放り込みたい。

「覚えて、いる」

そういわないと、どうせ暴れだすからな。

「じゃ、朝一で仕上げた一品、食べてくれるんやんな」

刹那の背後から出てきたのはお皿であり、お皿の上には昨日の憂さ晴らしをしたとしか思えない一品が乗っていた。

形状を表現したくはないほどに歪である。

「刹那さん、俺は昨日なんて言ったか、脳みその隅から隅まで探ってみてくれないかな?」

「恭耶は美味しいの二文字しか言わん!」

「都合のいい変換は止めろ!これのどこが美味しいといえる見た目だよ!」

ぱっと見て美しいなあと思える代物もあるだろうが、それを放棄した産廃じゃないか。

普通のレシピで作ったら三百五十九度味が変わるのにも関わらず、注意してもこの有様だもんな。
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