第七世界
「ぐえ」

形状の行方不明な物を腹に入れ、昨日とは別の気分の悪さを覚えながら帰り支度を行う。

「やっとのことで授業を受けられるのかよ」

もう何日も受けてない感覚だ。

それほどまでに、濃縮された日だったわけだ。

「そんなに私の授業を受けるのが楽しみか」

部屋の隅には楓が立っている。

もちろん、楓も帰り準備を終えているようだ。

「あのな、今回の事は、全部お前のせいじゃねえかよ」

もう二度と極悪非道の敵がいる約束は取り次ごうとは思わない。

「これで少しはいじめられずに済むじゃないか」

鷹威の血の覚醒のことを言っているのだろう。

「あのな、俺は、もしもの時以外に首を突っ込むのは勘弁なんだよ」

「君の性分だ、その台詞は嘘になるだろう」

分かったようにいいやがる。

「それより、大丈夫なのかよ?」

「牙狼の事か?」

牙狼はまた来るとか言っていた。

「今度は向こう側の土地に来るかもしれないな」

「今度はお前がどうにかしろよ。俺はもう腕をもがれるのはご免こうむるぜ」

牙狼が人間の世界で暮らし始めて、ちゃんと結婚の意志を見せるのなら俺は何も言うつもりはない。

それに、ティーナさんは寿命を使ってしまったんだ。

「ティーナさんには悪いことをしたな」

「ううん、そんな事ないよー」

赤と黒のチェック柄のワンピースを着ているティーナさんはバッグを持って、部屋に入ってくる。

「中々、こういった土地に来ることがなかったから、私にとってはいい経験になったよー」

いつもながらに明るくてポジティブで優しい。

この性格を楓の脳みそに刻んでもらいたい。

「ふう、君の脳みそには停学の二文字を刻んであげようか?」

案外本気だからこそ、恐ろしい話だ。
< 278 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop