第七世界
家から出ようとしたところで、梓さんと出会う。

「楓」

「何ですか?」

楓は足を止める。

「人間の生活に染まりすぎて、自分が何であるかを忘れぬように」

「あなたの教育のおかげで、それだけは忘れられるはずがないでしょうに」

何故か、楓の声に苛立ちを感じられる。

「ん」

梓さんは俺の思考を読んだのか、動きを止めていた。

「もう一つ、鷹威恭耶、あなたは新たな道を選んだおかげで、色々と厄介ごとが増えますよ」

覚醒が新たな道なのかどうなのかは分からないが体がもたないし、選びたくはなかったんだがな。

「その時は逃げる」

「馬鹿な事を、自分で生み出した種です。しっかりと処理なさい」

体は資本だというのに、厄介ごとばかり受けていたら留年してしまうではないか。

「それは君のスケジュール管理がしっかりと出来ていないせいだ」

楓は一言だけ余計な事をいい歩き始めた。

俺は真面目に学校に通っているつもりだし、授業も受けているつもりだ。

授業を受けさせてくれないのだから、スケジュールもへったくれもない。

「ちょっと待って待ってー!」

荷物を持った佳奈子さんが家から出てくる。

「私も帰る!」

「なんだよ、こっちに住み込みでいいんじゃねえのか?」

「あのねー、ザバイバーのこともあるから、これ以上はいてられないの」

近所の人間は利用してるだろうからな。

今頃は美咲が苦労でもしてんじゃねえのか。
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