第七世界
歩きながらやり取りをしていると、乾の登校している姿を見かける。

相変わらず、仕込み杖のようなポン刀を片手に今時のリュックを下げて、深く帽子を被っている。

誰かと登校している様子はない。

四天王とはいえ人間だ。

友達がいてもおかしくはないが、一人でいることを好むのだろうか。

乾のイメージからして、誰かが近寄る事はないとは思う。

「よ、先輩」

俺が挨拶をすると、帽子の奥の鋭い瞳がこちらに向いた。

「何か用か?」

ツンケンした態度を取っている。

「挨拶は基本だろ」

「そうだな、おはよう」

寝不足なのか、口数がひどく少ない。

元より、口数が多いほうではないとは思っているのだがな。

「朝はもっと元気にしたらどないなんや」

刹那は上下関係以前に、人間同士の付き合い方を少しは学んだほうがいいような気がする。

乾は刹那を一瞥する。

「確か、鷹威刹那だったな」

「なんや、ボクの名前しっとるんか」

「少しは気を静めろ。要らぬ物の怪が寄ってくる」

「はあ?どういう意味や」

「鷹威、お前がよく見ておけ。こちら側に来たのならな」

乾はリュックをかけなおし、校内へと歩いていった。

「こちら側、か」

俺が覚醒したという事にすでに気づいているのか。

しかし、乾の奴、妖刀の件は片付いたのだろうか。

未だに見つかっていないというのなら、結構危ない話なんだがな。
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