第七世界
校内は賑やかだ。

授業が始まる前だからだろう。

授業が始まれば唐突に止むのだから面白いものだ。

「たっかいくん!」

誰かが後方から走ってくる。

振り向きざまに拳が振り下ろされた。

「ちょ!」

咄嗟に防御するが威力は人間以上であり、俺は防御したままの姿勢で飛ばされる。

床を滑りながらも、何とか転ばずにいられる。

「お前、なあ!せっかくの平和な日々にピリオドを打つような事はやめやがれ!」

「あれ、おかしいな。今のを防ぐなんて、随分と速くなったね」

罪悪感など感じられず、自分の体に異変でも起きたのかと見回している。

そこに立っていたのは、佳那美だった。

「やだな、軽いスキンシップじゃないか。気にしちゃ負け負け、ね、刹那」

「ま、恭耶も目がさめてええんちゃうか」

普通の人間なら確実に骨折どころの騒ぎじゃない。

以前の俺でも大怪我だったと思うぞ。

「普通の人間として生きろよ」

埃を払いながら、立ち上がる。

「いたって普通だよ。他の人に対してはね」

「そこに俺が入ってないのはおかしな話じゃないか」

覚醒云々よりも、俺だって傷だらけの生活を楽しみにしてるわけではないぞ。

「あーあ、置いてけぼりにしたのは誰かなあ」

置いていったことを未だに根に持っているようだ。

あの状況で佳那美を連れて行くのは、不可能に近かったとは思うがな。
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