第七世界
二限目、三限、四限と素敵な時間が過ぎていく。

合間合間に犬子や佳那美の奇襲をかわしつつも、昼休みに到達する。

「んー、やっとだな」

背伸びをして、俺は学食へ向かう準備をする。

たまには一人で行ってみるか。

刹那も家でも外でも一緒というのは、気づかれも溜まるだろう。

刹那は弁当箱をカバンの中から取り出した。

いつの間に、作っていたというのか。

そもそも、暗黒の技術を開放した弁当箱の中身を食べる勇気があるというのか。

「なんや、その卑しい目は」

拒絶反応すら覚える刹那の料理が入った弁当箱を眺めていると、刹那がそれに気づいたらしい。

「いや、今日は学食の気分なんだ。好きなだけ食いな」

そして、自滅してくれ。

自分がいかに愚かなことをしているか。

そして、精進してくれ。

自分がこれから成長するために。

俺とお前の楽しい食卓を気付く為に。

しかし、開いた弁当箱の中にあるのは、普通のどこにでもある主婦が作りそうな具と御飯が入っている。

「ちょっと待て」

刹那がオカズに手を着けようとしたところでストップをかける。

「なんで、普通の御飯なんだ?」

「はあ?」

奇妙な事を言われたような顔をしているが、奇妙な体験をしているのはこちらも同じであった。

「いや、もっと、こう、ダイナミックな技術を使った料理なんじゃねえのか?」

「なんや、ボクの料理をなんやと思うてんの?」

「ミサの素材じゃないのか」

「素材になるのはあんたや!」

横隔膜に届きそうな突きを腹部に頂き、その場で悶えた。
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