第七世界
刹那は静かにご飯を食べ始める。

「おま、え、さすがに、きついぞ」

「人のご飯を愚弄したらそうなるんや、おぼえとき」

しかし、食堂へ行くという予定は変更された。

なぜならば、刹那の普通のご飯を食べたいからだ。

「刹那、この借りは返してもらう!」

手をつけていない唐揚げを熊の木彫りのごとく掬いあげて、口に運んだ。

「あああああ!ボクの唐揚げ!」

咀嚼しながら、刹那の作った唐揚げの奥深さを感じる。

「しっかりと味付けされているな、いつの間にこんな技術を」

俺が予想するに、創作する時間がなかったから普通に作ったんだろう。

予想以上にうまくできていた。

「ボクが後で食べようとしてた、唐揚げを」

静かなるオーラをまとい刹那は立ち上がる。

「今度はこっちが借りを返してもらう番やなあ」

戦闘モードに入り、構える。

「やめろ、体に負担がかかるぞ」

後ずさるが発頸の間合いからは逃れられない。

「安心してええで、発頸に負担はかからん」

邪悪な笑みを浮かべながら、回転は行われる。

「んなアホな」

気づいた時には遅し。

刹那は全身を使いながら腕にまで回転を伝わらせ、一撃を放つ。

俺の腹部に一撃を放たれ、廊下へと吹っ飛ばされる。

「昨日から仕込んでた唐揚げの恨みの恐ろしさを理解したか、アホ!」

そして、何事もなく再び席についてご飯を食べ始めた。
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