第七世界
「くっそ」

昼時はまだ続く。

カレーを少しも分けていただけなかった意地汚い犬子を撒いて、俺は屋上で寝そべっていた。

納豆パンはまずくはないがうまくもない。

そして、量があるわけでもない。

だから、腹は満たされるわけもない。

「あらー、どうしたの、い・ろ・お・と・こ」

上空から声が聞こえてきたので、目を開ける。

そこには三年の女生徒の服を着た中性的な顔と声を持つ人物が俺を覗き込んでいた。

俺は身を起こして、相手をよく確認する。

「なに?私の事、忘れちゃったわけ?」

「ええっと」

確かキャバクラにいるような名前だったとは思う。

「もう、本当、女の名前くらいは覚えておきなさいよ」

気さくな人物ではあるようだ。

「キャサリンよ」

「ああ、あの時の」

そういえば、犬子に関連した事件の時に来ていた人だ。

しかし、キャサリンという名前には似つかないくらい日本人だ。

「そんなに私の顔見てー、あなたなら付き合ってもいいわよ」

アグレッシブさが目につく。

しかし、ここで付き合うという選択は非常に面倒な事になりそうだ。

「いや、いいや。俺はここで休憩してただけだぜ」

「つれないわねえ、私ならいい世界に連れてってあげられるわよ」

「それより、先輩は一人で何してたんだよ?」
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