第七世界
「あら、そう?二ノ宮君にはかなわないけど、いい男ね」

以前も、二ノ宮がどうのこうの言ってた記憶がある。

「柳生!お前、学園祭の会議忘れてたのか!」

屋上の入り口付近で男の声がする。

柳生というのはキャサリンの本名なのだろう。

柳生と呼ぶからには、同級生か。

「キャサリンと呼べといってるでしょ!少し学祭の事で話があるから行くわ」

笑顔で手を振って、屋上から去っていく。

俺は再び一人になった。

「腹、減った」

「そんなにご飯食べたいんか?」

「パン一つじゃ足りん」

よく知った関西弁の持ち主に返事を返す。

入れ違いで屋上に来たのか。

「お前の飯があれば、午後の授業は乗り切れるんだがな」

腹が減っていちいち身を起こす気も起こらない。

「ふうん、しゃあないやっちゃな」

関西弁の持ち主もとい刹那は、弁当箱を持ち出した。

「どうせ恭耶の事やから、何も考えずにその場しのぎな行動とって何も手に入れられずに落ちぶれてるやろうと思ったんや」

俺の知っている人間というのは、限度を知らないのだろうか。

「それを俺にくれんのかよ?」

「何のためにボクがここにおると思うん?」

自分で余計な事を言っていないので、刹那は素直に弁当箱を俺によこした。

少し待て。

可能性として、弁当箱の中にある物体は闇の秘法かもしれない。

「あんた、まだ料理の事、疑ってるんか?」

「いや、ありがたくもらうぜ」

闇の料理と口から出そうになったが、取り上げられる予感がしたので口を噤んだ。
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