第七世界
「ウチのところはね、劇だよ」

劇といえば、いろいろと覚える事があって大変そうだ。

「へえ、何の劇なんだよ?」

「羅生門の鬼」

源頼光の四天王が活躍した後の話か。

鬼と平安が好きな人にはいいのかもしれない。

羅生門の鬼をもう少し説明すると、渡辺綱によって腕を切られた鬼が七日後に婆に化けて、綱を騙して腕を取り戻す話である。

確かに佳那美にとって鬼とは関連性は深いところではある。

吸血鬼とはいえ、鬼は鬼。

しかし、役として出られるのは八人くらいしかいない。

「あの鬼はやり手だね、人を騙す手口、化ける力、どれをとってもすごいよ」

「鬼をほめすぎじゃないのか」

「だって、私は鬼だよ?わかってる?」

「さいですか」

ならば、鬼は佳那美で決まりだろう。

「佳那美は鬼婆の役でもすんのか?」

「私は渡辺綱」

「真逆だろ。さっきまであんなに鬼をほめてたじゃねえか」

「綱のほうが格好いいじゃない」

格好いいの一言で片付けていいのか。

しかし、騙される人間を格好いいといえるだろうか。

鬼の腕を切るという点では格好いいが、油断して腕を盗まれる役だ。

本当に台本を見たのだろうか。

「それより、鷹威君のところは何すんの?」

「お化け屋敷だ」

「へえ、楽しそうだね」

一瞬見えた、殺意の目。

この女、俺を闇討ちするつもりか。
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