第七世界
あたりに人影はなく、それを狙っていたようだ。

日も落ちかけており、相手が誰かを明確に捕らえる事は出来ない。

「ちょっと、待てよ!」

手刀を弾くが頬を掠り、血が飛ぶ。

相手は無言のまま、切れ味のいい手刀を何度も繰り出す。

手刀が見えない事はないが、態勢を立て直さないと厳しい。

地面はコンクリートだが、丁度砂がたまっている場所に立っている。

「不意打ちしたのはお前なんだからよ、何されたって文句言うんじゃねえぜ!」

俺は一瞬の隙をついて、砂を蹴り上げる。

砂を防ぐために目をつぶった瞬間に、俺は技を出すために構える。

「五射穿孔!」

全身の筋肉の余計な力を抜いて、両腕から高速の弾丸を五発発射する。

相手が目を開けた時には遅い。

三発を回避したが、残りの二発は間に合わない。

俺の拳が鳩尾と下腹部に直撃する。

「ごあ!」

後方へ吹っ飛ぶが、紙一重で着地に成功する。

しかし、ダメージが大きいらしく、動く様子はない。

声からして女だというのはわかった。

「はあ、お前かよ」

逃げる前に確認はとれ、近づく。

「確か、乃亜だったか」

そこにいるのは、牙狼の付き人である乃亜という女の吸血鬼だ。

「あのな、こっちはいざこざがなければ静かに高校生活を満喫したいわけよ、わかるか?」

俺をにらみつけて、何も言わない。

「とりあえず、お前がした事について何か言う事があるだろ?」

乃亜は何も言わない。

悪い事をしたら何を言うかすらわからない鬼には、教育的指導が必要のようだ。

「お前にはとっておきの罰を用意しなくちゃならんようだな」

俺が腕を掴もうとすると、手刀を出そうとする。

しかし、弱っているので早さはない。

だからこそ、もう一発ボディーを入れて黙らせる。
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