第七世界
俺を襲った理由なんて、ろくなもんじゃないだろう。

刹那以外の事で理由なんか聞いても、面倒ごとが増えるだけだ。

人間同士の争いならまだしも相手は鬼で、死ぬか死なないかの瀬戸際の事だ。

俺は静かになった乃亜を家にお持ち帰りする。

「おい、刹那、帰ったぜ」

家の明かりがついているところ、刹那は家にいるようだ。

「なんや、遅かったやんか」

刹那がキッチンから出てきたようだ。

「お前な、俺は放置かよ」

「だって、長引きそうやったやんか。ボクにだってやる事あんねん」

やる事というのは、料理の勉強か。

それとも、学園祭の後に待っている試験の勉強だろうか。

一緒に住んでいても普段は別々の部屋だから、事細かには知らない。

テレビの話だとか、近場に何が出来たとか、些細な話はする。

「それより、その女は何や!」

やっと気づいたらしく、電子レンジがチンしそうな勢いで熱くなる。

「見覚えくらいあるだろ?」

「あるけど、何で恭耶が抱きかかえてるん?」

刹那の脳みそがまともに働いていたおかげで、説明する手間が省ける。

「まあ、お腹が減って倒れてたからさ、お前の料理でも食わせてやってくれ」

「しゃあないな、今日は特別に恭耶に創作料理を用意しとったんやけどな」

乃亜は神からの授け物であると考えなければならない。

ダークネスフードの事を考えれば、頬の傷など軽い。

回復しているはずだが抵抗しない乃亜は訝しげな顔を浮かべ、キッチンに運ばれる。

今、やっても勝てないという事を悟ったのかもしれない。
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