第七世界
「お、ちゃんと食べたやんか」

刹那は本気で言ってるのか。

俺だった場合、無理やりにでも食わせるのにな。

痙攣まで始めた乃亜の懐を探る。

「あったあった」

牙狼は鬼の住処から出られないといいつつも、現代の文化に頼っていないとは限らなかったために、携帯があるかどうかを確かめた。

そして、ちゃんとある。

待ち受け画面は、玄魔とのツーショットであった。

仲がいいんだなと思い、電話帳を覗く。

今の場合、牙狼にかけるのは面倒なので、玄魔にかけておく。

三回コールした後に男の渋い声が聞こえてくる。

「乃亜、牙狼様の下を離れて、どこにいる?」

「ああ、乃亜はこっちにいるぜ」

「お前は」

明らかに戸惑いの声をあげている。

「この前、お前達に殺されかけた鷹威だよ」

「要求は何だ?」

戸惑いはあるが、至って冷静ではあるようだ。

「この女を連れ帰ってくれよ」

「何?」

「今のこいつはそっちに帰る事が出来る状態じゃないんだ。理由はこっちに来た時にわかる。それとも、見捨てるか?見捨てるなら、俺は外に放り出すつもりだぜ」

殺しに来た奴に、優しさを見せるつもりはない。

ただ、本気で危害を加えるつもりはないけどな。

刹那の食事の件は、死なない程度の危害だから、反省させるという点では許される。
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