第七世界
「恭耶、ボク、恭耶が心の中ではとんでもない事を考えてるんちゃうかと疑ってたんやけど、それはボクの勘違いやってんな」

刹那がちょちょぎれる涙を指で掬い取る。

「少なくともお前の料理に対する評価は地面を突き抜けて、地球の裏側まで行っているなんて事は思ってもねえぜ」

人に一度ついた癖は中々抜けない。

そう、今のように。

「きょ・う・や」

涙を自由自在に出し入れできるのか、すでに涙の跡すらなく笑顔である。

「大好きぃぃぃ!」

噓をついた分の威力が倍化されているガゼルアッパーを打ち込まれ、俺も乃亜と同じく床で痙攣を起こす。

自分のことを棚にあげて言わせてもらおう。

女って平然と噓をつけるとはこの事である。

「腹空かせながら一日反省しとき」

背中を見せ、再び片付けを行う。

「人生は選択の連続だな」

声は出せるが、動く事は出来ない。

本当は、刹那のほうが鷹威の血に適合しているのではないかと思いたくなる。

なぜなら、技を使いこなせているからだ。

ただ、体が少し追いついていないだけだ。

刹那が片付けを終えると、自分の部屋に戻っていった。

しばらくすると回復し、立ち上がる。

「いてて」

机の上を見ると、ダークイリュージョンの行われていない料理がひっそりとたたずんでいた。

豆腐とチャーハンである。
< 308 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop