第七世界
「この土地にて、鬼の遺産の気配がしました」

乾にとって記憶が新しい。

しかし、玄魔が言うのは乾の知っている物ではない。

乾はそう思っている。

「吸血刀以外の物、か」

吸血刀はすでに乾が回収しており、地下へと封印されている。

吸血刀の噂は知識のある吸血鬼ならば、誰しも知っている。

「吸血鬼が生み出した仮面でございます」

「そうか」

乾は瞑想を解く。

「その仮面を打ち砕いて欲しいのです」

「人間側にとっても、吸血鬼側にとっても災厄を呼ぶ物らしいな」

「はい、あれの操作はどのような者とっても難しいのです」

「主君にでも頼まれたか」

会話している内に乾は理解した。

男の出で立ち、立ち振る舞い。

上に立つ者ではなく、支配される側の者だという事を。

「お前の主君について興味はない」

何故、主君自身が動かず、乾自身に頼んだ事も興味はなかった。

ただ、誰にとっても害となるのであれば、処理するのが乾家の役目。

乾は立ち上がり、玄魔へと振り返る。

「こちらで処理はする。だがな、それを世に出したお前達、吸血鬼はわが身を省みて恥じろ。そう主君に伝えておけ」

乾は一言残すと、家路を辿る。

玄魔は頭を深く下げ、乾の背中を見送った。
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