第七世界
「よろしくお願いします」

一礼し、訓練が始まる。

お互いに構えると間合いを掴むために、音を立てないすり足で移動する。

間合いを読みあうが、光蔵が放つプレッシャーは重苦しく、萌黄は冷静を装っていても心にかかっている負担は大きい。

いかにして相手を倒すか、どこを狙うかを考えても、隙があるように見えてどこにもない。

先に動くいたのは萌黄だった。

「ふ!」

綺麗な太刀筋で腕に叩き込もうとするが軽くいなされる。

後ろに下がればやられると思った萌黄は、剣筋を乱すことなく二発、三発と相手に踏み込んでいく。

しかし、光蔵の冷静さもまた変わらず、剣筋を冷静に見据え回避する。

相手の筋肉の動きを見て的確に判断し、それによって対処していく。

対応する動きに過ぎないのだが、萌黄相手にはそれで十分であった。

自分よりも早い動きを持つ者になると、その一歩遅い対応が命取りになりかねない。

相手の思考を先読みする事、動いた瞬間の音が必要になる。

しかし、光蔵にとって、大抵の相手は対応で間に合うのだ。

「はあ、はあ」

すべてをいなされ、プレッシャーが続いているせいか、萌黄は息を上げる。

その隙をついた光蔵は、萌黄の軽く手を叩き木刀を床へと落とした。

「参りました」

萌黄は手を摩りながら頭を下げた。

木刀とはいえ痛みは走る。

光蔵も一礼。

深呼吸をして自身が放つプレッシャーを抑える。
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